そっと傍にいてあげる

心の手で撫でてあげて

 

数年前のことです

ある日 ベランダに一羽の鳥がやってきました

名前は分からないのですが 全体に白くて 黒い部分もあり 尾っぽの長い鳥です

調べると ハクセキレイという鳥が一番近いように思うのですが どの画像を見ても なんか違うような気がして しっくりきません

 

その鳥が 5月から10月くらいまででしょうか 暑くなる前から 寒くなる前くらいまで 気付いている限り ほぼ毎日ベランダに来ていました

勿論 同じ鳥という証明はできませんが・・・

餌付けをしている訳ではなく 植物を置いている訳でもなく ベランダに置いている物は 物干し竿と 室外機のみという お愛想なしのベランダです

何故来るのか分りませんし 一日に何回来ているのかも分かりませんが 窓が閉まっていても なんとなく気配を感じて見るとベランダにいます

 

そして 不思議に思うのが 仕事で外出している時は 夕方帰って来ると ベランダに来ます

ですが 家に一日いる時は お昼前後の一回しか 気付くことができず 夕方に見かけたことがありません

きっと 私が気付かない間に 何回も来ているのでしょうね

もしかしたら 私が気付かないだけで 本当に毎日来ていたのかもしれません

 

なんのお世話をするわけでもなく 飼っているわけでもないのですが 毎日毎日来てくれると 情が移って可愛くて仕方ありませんでした

芸を仕込んでいるわけではありませんが やって来ると

「今日も来たん!」

と話かけています

 

しばらくベランダで トコトコと可愛く歩いて チチッて鳴いて そのうち飛んで行きます

「また明日ね~」

 

そして

次の日も

また 次の日も・・・

「今日も来たん!」

そして

「また明日ね~」

という日々が続きました

 

ですが

半年程したら

ある日 ぱったりと その鳥は来なくなってしまいました

来る日も来る日も

「今日は来るかなぁ?」

と思いましたが

一週間が過ぎたので もういよいよ来ないと諦めました

「寒くなったので もうどこかへ行ってしまったんやなぁ」

と思うことにしました

 

情の移った鳥に逢うというのが 当たり前の毎日になっていましたので なんだか淋しかったです

ですが 家族でもなく まして恋人でもないのですが ちょっと失恋したような気持ち・・・

 

そして

日常に紛れて そんなこともすっかり忘れて 年も越し 一年で一番極寒の2月のある日

仕事に行こうと 最寄りのJRまで歩いて行くと 駅の近くで 鳥が私に寄ってきました

「あ・・・」

あの鳥です

あの鳥ではないかもしれないけれど

あの種類の鳥です

 

「久しぶり 元気やった?」

暫くついて来て 私は電車に乗りました

 

それから

何故か 仕事に行く度に

あの鳥が出現します

??????

 

JRに歩いて行っても 駅近くで出逢うし・・・

京阪に歩いて行っても 途中で出逢ってついてくるし・・・

最寄りのバス停で待っていても 何故か突然現れて 一緒にずっと待っているし・・・

時には

三階建ての駅の 二階のベンチに座って スマホを見ていたら 目の端に何か入ってきたと思ったら あの鳥が こちらを向いて トコトコ歩いて足元まできました

 

勿論 毎回違う鳥なのでしょうが 不思議に思うのが いつも一羽なのです

回りにも お友達らしき鳥がいないのです

スズメや ハトや カラスは 同時に何羽も見ることが多く むしろ 一羽で見ることが少ないくらいです

何度も不思議なことが続きましたが それも暫くしたら 逢わなくなりました

 

そして 昨日

3ヶ月ぶりにJRに乗ったのですが 3階のホームで待っていると あの鳥が また足元に寄ってきました

本当に久しぶりです

回りを見渡しても やっぱり たった一羽です

同じ鳥ではないのでしょうが とても嬉しっかたです

遠距離恋愛の彼に久々に逢うのって こんな気持ちかなぁ~と思いました

 

 

今日の作品

そっと傍にいてあげる 心の手で撫でてあげて

ですが

辛い時 一人でも そっと傍にいてくれる人がいる人は とても幸せです

家族であったり 友達であったり 恋人であったり・・・

 

そして そんな時

楽しませてくれたり 一緒に笑えるように心配りをしてくれるのは とても嬉しいことです

でも

多くを語らず そっと傍に 寄り添ってくれることも また とても素敵で 有り難く感じるかもしれません

目には見えない 心の手で撫でてもらっていると感じるとき 人は幸せと思うのかもしれません

 

私は 家族や友人 そして 多くの人に支えてもらっています

そして 忘れてはいけない あの鳥さんにも・・・

いつも 私に逢いにきてくれて そっと傍にいてくれた 鳥さん

何も語らないけれど 私の心を癒やしてくれた 鳥さん

「鳥さん いつも そっと傍にいてくれて 心の手で撫でてくれて ありがとう」

「また逢おうね」